今時の「住宅ローン事情(1)」5年前とどう変わったか

新築住宅の購入は、人生でも最大級のライフイベントのひとつです。

しかし、5年前(2020年頃)と比べて日本の経済環境は大きく変化しており、それが住宅 の購入計画や住宅ローンの選択に、大きな影響を与えています。

主な経済的要因の変化としては、

  • 低金利時代の終焉
  • 物価上昇(インフレ)による住宅価格・建築費の高騰
  • 人生100年時代を意識した住宅ローン
  • 賃金の伸びと実質所得のギャップ

ここでは、これら経済的要因の変化が、住宅の購入や住宅ローンの仕組みに及ぼす影響をわかりやすく解説してみます。

目次

低金利時代の終焉が住宅ローンに及ぼす影響について

金融政策の転換

日本では長年にわたり超低金利政策が続き、住宅ローン金利も歴史的な低水準に抑えられてきました。その結果、多くの人が比較的気軽に住宅ローンを利用し、マイホームの取得を進めてきました。

しかし近年、世界的なインフレの進行や金融政策の転換を背景に、金利は上昇局面へと移行しつつあります。いわゆる「低金利時代の終焉」は、住宅ローンの考え方そのものに大きな変化をもたらしています。

金利の決定プロセス

住宅ローンの変動金利と固定金利は、基準とする市場金利の違いによって決定されます。

変動金利は、銀行が短期で資金を調達する際の金利を反映し、主に短期プライムレートや政策金利の影響を受けます。一方、固定金利は、長期国債の利回りなどを基準に設定されます。

銀行は将来の金利変動リスク、調達コスト、利益を加味して金利を決定します。こうした仕組みにより、変動金利は低めに、固定金利は高めに設定される傾向があります。また、金利上昇局面では、まず固定金利が上がり始め、その後に変動金利が上がってくるという時間差が生じます。

返済額負担の増加という直接的な影響

金利が上昇すると、住宅ローンの毎月の返済額や総返済額は確実に増加します。

特に変動金利型の住宅ローンを既に利用している場合、金利上昇はそのまま返済額の増加につながるため、家計への影響は大きくなります。これまで「低金利だから大丈夫」と考えていた人にとっては、想定外の負担増になる可能性もあります。

そのため、今後は住宅ローンを組む際に、将来の金利上昇を織り込んだ返済シミュレーションが不可欠になります。

未払利息発生のリスク

現在、日本の住宅ローン利用者の約7割以上が「変動金利」を選択しています。

金利の上昇に備えて、多くの銀行では「5年ルール」と「125%ルール」という仕組みが採用されています。

金利が上がっても5年間は月々の返済額を据え置くルール。
5年後の返済額見直し時に前回の返済額の1.25倍までしか上げないというルール。

一見、消費者を守る優しいルールに思えますが、月々の返済額の内訳の中で「利息」の割合が増え、「元金」が全く減らない、或いは、利息が返済額を上回る結果、「未払利息」が発生するリスクがあります。

返済比率の上昇と借入可能額の縮小

金利が上がると、同じ年収でも借りられる金額は小さくなります。

金融機関は返済比率を重視するため、金利が高くなるほど毎月返済額が増え、結果として借入限度額は抑えられるのです。その結果、希望していた価格帯の住宅が購入できなくなり、物件の規模や立地、築年数などを見直さざるを得ないケースも増えていくと考えられます。

住宅ローン金利の上昇は、住宅市場全体の需要にも影響を与える重要な要素です。

固定金利選択の可否

固定金利は変動金利よりも先に上昇を始めます。すでにフラット35を含む固定金利商品は、数年前と比較して一段高い水準にあります。

固定金利の問題点は、

  1. 固定金利に切り替えると、当然に毎月返済額が増える。
  2. 借り換えには事務手数料や登記費用、保証料など数十万円程度の諸費用がかかる。
  3. 借り換え時には、再度審査があり、収入の変化、物件評価の低下などにより審査が通らない場合も考えられる。

固定金利への借り換えは「理論上は安心でも、現実にはコストや条件面で選びにくい」選択となりやすいのです。

物価上昇(インフレ)が住宅価格・建築費の高騰が住宅ローンに与える影響

住宅価格・建築費はなぜ上がっているのか

近年、エネルギー価格や原材料費、人件費の上昇を背景に、物価上昇、いわゆるインフレが進行しています。とりわけ住宅分野は、住宅ローンの組み方や家計への大きな影響が生じています。

住宅価格や建築費の上昇の背景には、いくつかの要因があります。木材、鉄鋼、セメントといった建築資材の価格上昇、輸送コストの増加、人件費の上昇などが重なり、住宅一戸あたりの建築コストは大幅に増加しています。

これらは短期的な現象ではなく、構造的な要因を含んでいるため、当面は元の水準には戻らないと考えられます。

借入額の増大による「返済比率」の悪化

物件価格が上がれば、当然ながら借りる金額も増えます。借入額の増加は金融機関の審査にも影響します。

例えば、自己資金が同じであれば、借り入れが500万円増えた場合には、毎月の返済額は数万円単位で増えます。これにより、年収に占める返済額の割合(返済比率)が上昇し、希望する金額を借りられないケースが増えます。

新築住宅の価格が高騰する中で、中古住宅やリノベーション物件を選択する人も増えてきます。インフレは住宅ローンを通じて住宅取得のハードルを確実に引き上げることになります。

金利とインフレの関係

インフレが進行すると、中央銀行(日本銀行)は物価を抑制するために、政策金利を引き上げる可能性があります。これにより住宅ローン金利も上昇しやすくなります。

つまりインフレは、住宅価格を押し上げるだけでなく、「物件価格の上昇」と「金利上昇」を同時ににもたらして、家計を圧迫するという二重の負担を強いる可能性があります。これにより、これまでと同じ収入水準でも住宅購入が難しくなるケースが増えています。

すでに固定金利で借りている人はともかく、これからの購入は物件価格の上昇と金利上昇の「ダブルパンチ」になる可能性があるため、より慎重な資金計画が求められます。

人生100年時代における住宅ローンの考え方

超長期の住宅ローンの登場

日本は世界有数の長寿国となり、「人生100年時代」という言葉が現実味を帯びるようになりました。

医療の進歩や生活水準の向上により、長く生きることが当たり前になった一方で、私たちはこれまでとは異なる人生設計を求められています。その中で大きく変化しているのが、住宅ローンの考え方です。かつて住宅ローンといえば、30年から35年で完済し、定年時には住居費の負担をなくすことが理想とされていました。

現在では、住宅価格の高騰、低金利環境の継続、さらには定年延長や再雇用制度の普及により、40年や50年といった超長期の住宅ローンを選択する人も増えています。人生が長くなった分、住宅ローンも「長く付き合うもの」へと変わりつつあるのです。

超長期の住宅ローンの特徴

人生100年時代における住宅ローンの最大の特徴は「返済期間の柔軟化」にあります。

返済期間を長く設定することで、月々の返済額を抑えることができ、子育てや教育費、老後資金の積立といった他のライフイベントとのバランスを取りやすくなります。特に若い世代にとっては、無理のない返済計画でマイホームを取得できる点は大きなメリットです。

一方で、返済期間が長くなるほど、支払金利の総額が増えるという点には注意が必要です。定年後の年金収入や貯蓄との兼ね合いを十分に考慮しなければなりません。

団体信用生命保険の重要性

人生の後半には、病気や介護、収入の減少といったリスクも高まります。長期ローンを選ぶ際には、こうした不確実性を織り込んだ計画が欠かせません。

そこで重要になるのが、団体信用生命保険(団信)の存在です。団信は、住宅ローン返済中に万一のことがあった場合、残債が保険で弁済される仕組みです。

近年では、一般団信に加え、癌や三大疾病、就業不能状態に備える保障など、選択肢が広がっています。返済期間が長期化するほど、将来のリスクに備える意味で、団信の内容を十分に検討することが重要になります。

繰り上げ返済の活用

人生100年時代の住宅ローンでは「完済時期」に対する考え方も変わってきています。必ずしも定年までに完済することだけが正解ではなく、老後も一定の返済が残る代わりに、手元資金に余裕を持たせるという選択肢も現実的です。

ローン返済は、資産形成という側面も持ち合わせています。一方で、定年後に返済が残ることを長期ローンのリスクとするならば、繰上返済の活用が重要なポイントとなります。

収入が増えた時期や教育費が一段落したタイミングで繰上返済を行えば、返済期間や利息負担を大きく軽減することができます。人生のステージに応じて返済計画を見直せる柔軟性こそが、人生100年時代の住宅ローンの大きな特徴と言えるでしょう。

賃金の伸びと実質所得のギャップが住宅ローンに及ぼす影響

賃金上昇と生活のゆとり

近年、日本では「賃上げ」が話題となっている一方で、多くの家計が生活のゆとりを実感できていません。これは、名目賃金が上昇しても、物価上昇(インフレ)によって実質所得が伸び悩んでいるためです。

この賃金の伸びと実質所得のギャップは、住宅ローンの利用や返済に大きな影響を与えています。

まず、名目賃金とは、給与明細に記載される額面上の収入を指します。一方、実質所得とは、物価変動を考慮した「実際の購買力」を意味します。

仮に賃金が3%上昇しても、物価が5%上昇すれば、実質所得は2%減少することになります。この状態が続くと、家計は表面的には収入が増えているように見えても、生活費の負担が重くなり、可処分所得はむしろ減少してしまいます。

金融機関の考え方の変化

このギャップは、住宅ローンの借入可能額に直接的な影響を及ぼします。

金融機関は審査において年収や返済負担率を重視するため、名目賃金の上昇は一見するとプラスに働きます。しかし近年では、生活費の上昇を踏まえ、実質的な返済余力をより厳しく評価する傾向が強まっています。

特に若年層や子育て世帯では、食料品や光熱費、教育費などの上昇が家計を圧迫し、同じ年収であっても「余裕のない家計」と判断されるケースが増えています。

そのため、金融機関側の考え方にも変化が生じてきました。実質所得の圧迫を背景に、銀行は「貸せるかどうか」だけでなく、「長期にわたり返せるかどうか」をより重視するようになりました。

返済期間の長期化や共働き収入の合算、ボーナス返済の抑制など、リスクを分散する提案が増えているのは、この流れの表れです。

まとめ

住宅ローンを取り巻く環境は、この5年ほどで大きく様変わりしました。

5年前は、低金利が当たり前で「借りやすい時代」と言われていましたが、現在は金利、物価、働き方のすべてを踏まえた、より現実的な判断が求められる時代になっています。

まず大きな変化として挙げられるのが、低金利時代の終焉です。

5年前は変動金利を中心に、史上最低水準の金利が続いており、金利上昇を強く意識する必要はほとんどありませんでした。しかし現在は、金融政策の転換により金利が動き始め、将来的な返済額の増加を考慮した住宅ローン選びが欠かせなくなっています。金利タイプの選択や返済余力の確認は、以前にも増して重要になっています。

次に、物価上昇(インフレ)による住宅価格・建築費の高騰です。

5年前と比べ、建築資材や人件費は大きく上昇しました。その結果、新築住宅の価格は高止まりし、同じ条件の住宅でも必要な借入額が増えています。住宅ローンは「低金利で借りられるか」だけでなく、「高くなった住宅をどう無理なく返すか」が問われるようになりました。

また、人生100年時代における住宅ローンという考え方も、この5年で定着してきました。以前は35年返済が一般的でしたが、現在では40年、50年といった長期ローンも選択肢として広がっています。毎月の返済額を抑えられる一方で、老後まで返済が続く可能性があるため、定年後の生活設計と一体で考える必要があります。

さらに、賃金の伸びと実質所得のギャップも見逃せません。名目賃金は上昇傾向にあるものの、物価上昇によって実質所得は思うように伸びていないのが現状です。5年前であれば問題なかった返済額でも、現在では生活費の増加により家計を圧迫するケースが増えています。

このように、住宅ローンは「借りやすさ」を重視する時代から、「返し続けられるか」を重視する時代へと変わりました。5年前と同じ感覚で借入額を決めるのではなく、将来の金利、物価、収入の変化を見据えた計画を立てることが、これからの住宅ローン選びでは欠かせません。

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