住宅性能(その1)
そもそも「住宅性能」って何なんだ?
昨今、「家は、性能。」をスローガンに高い住宅性能を追求して、販売棟数を伸ばしている住宅メーカーがあります。今年に関しては、全国で何と2万棟の販売実績を目標に掲げているとのこと。
この従来の家のあり方に革命をもたらした、「住宅性能」ってそもそも何なんだろう言うのが今回のテーマです。
いきさつ
少し、硬いお話になりますが…
1990年代の日本では、欠陥住宅や手抜き工事が社会問題となり、「家を買っても安心できない」という不安が広がっていました。当時は住宅性能を比較する基準がなく、品質を客観的に判断できず、トラブル時には解決に多大な時間と費用を要しました。
ハウスメーカー側も性能を示す共通ルールがないため、住宅の品質を正確に伝えられず、性能競争が起きにくい状況でした。こうした課題を受け1999年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が制定、2000年に施行されました。
目的は住宅の品質確保、購入者の保護、紛争の迅速な解決です。
法律の三本柱は、①10年間の瑕疵担保責任、②住宅性能表示制度、③紛争処理機関の整備であり、特に性能表示制度は第三者評価により安心して住宅を選べる基盤となりました。
現実的には、ここでポイントになるのは、住宅性能の表示制度と考えられます。
一方で、長期優良住宅制度は2009年「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」を根拠として発足し、品確法や建築基準法と連動しながら、長く安心して住める住宅を国が認定する制度です。「長期優良住宅」の普及の促進は、主に、建て替えに係る費用の削減で住宅に対する負担を軽減すること、などを目的として制定されました。
要約すると
住宅性能表示とは、そのお家の性能の通信簿または成績を表示する制度です。
消費者が、あるお家を購入するときに、そのお家の性能を等級や数値で表示して、他のお家とわかりやすく比較できるようにします。
長期優良住宅とは、一言でいえば住宅をできるだけ長持ちさせる制度です。
燃えない、倒壊しない、老朽化しない、100年は安心して住み続けられるお家を立てることを推奨します(それまで、日本の住宅の寿命は平均30年とされてました)
住宅性能の中身を知る(10分野・32項目 一覧)
- 構造の安定(4項目)
- 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)
- 耐震等級(構造躯体の損傷防止)
- 耐風等級
- 劣化の軽減に関する対策等級(劣化対策)
- 火災時の安全(2項目)
- 火災時の安全に関する対策等級(感知・警報装置など)
- 感知警報装置設置等(警報設備の有無)
- 劣化の軽減(1項目)
- 構造躯体の劣化対策等級(構造の安定に重複する扱いもあり)
- 維持管理・更新への配慮(3項目)
- 維持管理対策等級(給排水管の点検・清掃・更新のしやすさ)
- 更新対策等級(配管・設備更新の容易性)
- 専用配管方式の採用状況
- 温熱環境・エネルギー消費量(4項目)
- 断熱等性能等級(外皮性能)
- 一次エネルギー消費量等級
- 換気対策(24時間換気設備の有無)
- 暑さ寒さ対策(地域区分による断熱基準適合)
- 空気環境(3項目)
- ホルムアルデヒド発散等級(内装材料等)
- 揮発性有機化合物(VOC)対策
- 換気設備の性能(計画換気)
- 光・視環境(2項目)
- 採光に関する対策
- 照明環境(明るさ・昼光利用のしやすさ)
- 音環境(2項目)
- 床衝撃音遮断性能等級(共同住宅など)
- 空気伝搬音遮断性能等級(隣戸間など)
- 高齢者等への配慮(4項目)
- 高齢者配慮対策等級(バリアフリー性能)
- 段差解消・手すり設置などの容易性
- 住戸内の移動空間の確保
- 将来の改修容易性(介護対応)
- 防犯・防災・その他(7項目)
- 開口部の防犯性能(侵入防止対策)
- 雨水の排水対策
- 外壁・屋根の防水対策
- 耐雪対策
- 給湯・設備の安全性
- 防火・延焼防止対策(隣家への配慮)
- 非常時の避難・安全確保対策
ハウスメーカーの対応の様々
現在、多くのハウスメーカーにとって、長期優良住宅基準や高い住宅性能は、標準的な提供価値となっており、顧客への安心提供、競争力の維持、そして税制優遇などのメリットを享受できるように積極的に取り組んでいます。
ただし、住宅の建築を請け負う側においては、性能表示は必須ではなく任意であるため、具体的な対応範囲や申請費用、メンテナンス体制などはメーカーや商品プランによって異なります(2025年の4月以降は、建築確認申請において、省エネ基準適合判定が組み込まれている)
性能表示で、100点満点の住宅はあるのか?
上記の住宅の性能表示(住宅性能表示制度)において、10分野32項目のすべてで最高等級を満たすことは、理論上はともかく、現実的には非常に稀で困難であると考えられます(試験の成績で常に100点満点が取れないのと同様で、そもそもが無理ゲー)
大手ハウスメーカー
大手ハウスメーカーが対応している住宅性能表示の分野は、各社の標準仕様により異なります。しかし、多くのメーカーが対応し、高い等級などを取得している主な7つの分野は、下記のようになります。
- 構造の安定(耐震性・耐風性など)
- 火災時の安全
- 劣化の軽減(耐久性)
- 維持管理・更新への配慮
- 温熱環境・エネルギー消費量(断熱性能、省エネ)
- 空気環境(ホルムアルデヒド対策、換気性能)
- 高齢者等への配慮(バリアフリー)
大手ハウスメーカーは、住宅性能表示のうちこの「7分野」に対応しているケースが多く、中でも耐震性・耐久性・断熱省エネ性能・空気環境は特に重視されており、性能評価基準の最高等級取得を標準化していることが多いです。
その他の建築業者の場合
住宅性能表示制度における下記の4分野については、新築住宅の性能評価において必須とされる評価分野です。
- 構造の安定に関すること
- 劣化の軽減に関すること
- 維持管理・更新への配慮に関すること
- 温熱環境・エネルギー消費量に関すること
この「4分野」は、長期優良住宅の認定、銀行の担保評価、住宅ローン減税の対象判断にも関係し、「住宅の長寿命化・安全性・省エネ性」を重視する基本分野として扱われているため、ほとんどの建築業者で対応していると思われます。
住宅性能向上のメリット・デメリットをまとめる
高性能住宅のメリット
- 快適で健康的な室内環境
- 断熱・気密性能が高いため、冬は暖かく夏は涼しく、1年中良好な室内環境が保たれます。計画換気を導入することで、常に新鮮な空気を取り入れ、空気のよどみや湿気の滞留を防ぎ、外部の騒音が入りにくく室内の音も漏れにくい。
- 省エネルギーと光熱費の削減
- エアコンや暖房の使用時間が短くなり、冷暖房費を30〜50%削減できるケースもあります。冬は暖房効率が大幅に向上し、無駄な熱損失を防ぎます。「少ないエネルギーで快適に暮らせる家」になります。太陽光発電や蓄電システムと併用すれば更に節約可能で、年間の消費エネルギーの収支を実質ゼロ又はマイナスにすることも可能です(ZEH)。
- 健康リスクの低減
- 高性能住宅は健康維持に大きな貢献をします。高断熱・高気密・高換気システムなどの設計により室内環境が安定し、様々な健康リスクの低減が期待できます。ヒートショックの予防、睡眠の質の向上、アレルギー性疾患の改善、高血圧リスクの軽減、特に高齢者は心疾患や脳血管疾患のリスクも下げられます。
- 資産価値に与える影響
- 長期優良住宅や高性能住宅は、断熱・気密・耐震・省エネ性能が高く、長期優良住宅やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)などの認定を受けやすいです。これらの認定は、金融機関の融資条件や不動産査定においてプラスに働くことがあります 。耐久性が高く劣化しにくいため、築年数が経っても一定の価値を保ちやすい傾向があります。
高性能住宅のデメリット
初期コストが高い
コストが高い主な理由は、高性能を実現するための建材・設備と、それを正確に施工するための高い技術と手間にあります。
高性能な断熱剤や工法、高気密サッシ、性能の高い換気システム、給湯器・太陽光システム等の省エネシステムの導入。また、高度な知識と技術を持った職人による緻密な施工、厳しい品質管理(気密測定など)が必要になります。
メンテナンスの煩雑さ
高性能住宅は高気密・高断熱・高耐久を前提に設計されていますが、性能を維持するには定期的な点検が不可欠です。
換気システムは空気環境の要でありフィルターの清掃や部品交換を怠ると空気の質が低下し、結露やカビの原因になります。エアコン、給湯器、太陽光システムなどの設備も高効率型が多く、定期的な点検と買い替えが必要です。
デザインや間取りの制約
高性能住宅がデザインや間取りに制約を受けるのは、高い断熱性、気密性、耐震性といった住宅性能の確保のため特定の設計上の配慮が必要となり、「性能優先の設計思想」と「暮らしの美学」のせめぎ合いになるからです。
そのため、外観はシンプルな箱型や総二階構造が推奨されることが多く、性能を最大限に引き出すための設計ルールが間取りの自由度にある程度の制限を加えます。
リフォームや改修が難しい
高性能住宅の改修やリフォームが難しいのは、断熱・気密・構造が一体化しているためです。
壁や床、天井には高断熱材や気密シートが施工されており、後からの改修で性能バランスが崩れやすくなります。窓の交換や間取り変更は断熱ラインや気密層を壊してしまいます。また、換気システムや空調経路も緻密に設計されているため、設備変更にも専門知識が必要です。
高性能住宅にまつわる話アルアル
玄関のドアが開かないことがある
あります。高気密・高断熱住宅では、室内外の気圧差によって玄関ドアが開きにくくなる現象が報告されています。
原因は負圧状態(室内の空気が外に引っ張られる)です。特に、換気扇やレンジフードを強く回すと、室内の空気が排出されて負圧状態になります。外から玄関ドアを開けようとすると、外気が室内に流れ込もうとしてドアが吸い付くように重くなることがあります。
静寂すぎることがある
高性能住宅の高い遮音性によって、静かすぎることへの不安や不快感を覚える人がいるのは事実です。
高性能住宅は、外部の騒音が遮断されるため非常に静かな環境になり、特に夜間などは、外部の音が全く聞こえないことで異様な静けさを感じ、不安になることもあります。
睡眠時などは、自分の心臓の音が聞こえると言われています。
閉所恐怖症の人は高性能住宅に住めないことがある
高性能住宅と呼ばれる家は、断熱性や気密性を高めて外気の影響を受けにく、室内の温度や湿度を快適に保つことを目的としています。そのため、隙間が少なく、窓なども閉めた状態での生活が基本となることが多いです。
しかし、高性能住宅に住めないという医学的な根拠や一般的な見解は確認できません。
閉所恐怖症は、症状の程度やトリガーが人によって異なります。「気密性の高さ」や「窓をあまり開けない」生活スタイルが、人によっては圧迫感や息苦しさ、閉じ込められている感覚につながる可能性は否定できません。
窓がとっても小さくなることがある
高性能住宅で窓が小さくなるのは、断熱と気密の性能を高めるためです。
窓は家の中でもっとも熱が出入りする部分で、壁に比べて同じ面積でも窓からの熱損失は約4〜10倍にもなります。窓を小さくして開口部を減らすことで冷暖房効率を高め、省エネ性能を向上させます。
しかし最近では、高性能住宅の窓ガラスには、「複層ガラス」や「トリプルガラス」を採用して熱の伝わりを抑えます。さらに樹脂や木製の高断熱サッシを組み合わせることで、結露を防ぎながら快適な室温を保つよう設計され、窓の大きさも改善されています。
高性能住宅に住むと虚弱体質になることがある
高性能住宅の都市伝説のひとつです。
そう感じる人がいるのは環境変化への慣れの問題です。高性能住宅は気密・断熱性が高く、室内が常に快適な温度と湿度に保たれます。そのため、外気の寒暖差に体が慣れにくくなり、外出時に寒さや暑さを強く感じることがあります。
また、換気を止めたりフィルターを清掃しないと、二酸化炭素や湿気がこもり、体調不良を感じる場合もあります。快適な室内にこもりがちになって運動量が減ると、体力が低下することがあります。
高性能住宅の家の中では中では魚が焼けないことがある
高性能住宅では「魚が焼けない」と言われるのは、家の気密性が非常に高いため、調理のにおいや煙が外に逃げにくいからです。
「焼けない」ではなく「焼くと困ることがある」というのが正確です。隙間から自然に換気されることがないため、魚を焼くと室内ににおいが長く残ってしまいます。
また、24時間換気システムは空気の循環を目的としており、調理時の強い煙や油分を十分に排出できません。そのため、無煙ロースターやグリル専用機器、強力な換気扇の併用が推奨されます。
電気代がマイナスになることがある
高性能住宅は、条件が整えば電気代がマイナスになることがあります。
これは、断熱性や気密性が高くエネルギー消費が少ないうえに、太陽光発電で自家発電した電気を蓄電したり、売電できるためです。
使用電力量より発電量が多い月には、売電収入が電気代を上回り、結果的にプラス収支になることがあります。特にZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)仕様では、年間のエネルギー消費を実質ゼロに設計しており、発電と省エネのバランスを最適化しています。ただし、天候や季節、売電価格の変動によっては常にマイナスになるとは限りません。
建築業者によって品質に差が出ることがある
高性能住宅は、建築業者によって品質に大きな差が出ます。
同じ断熱材や窓を使っても、施工の精度や職人の技術によって気密性能や断熱効果が大きく変わるためです。特に気密シートの貼り方や断熱材の隙間処理など、見えない部分の施工が性能を左右します。
また、業者によっては性能値を実測せず「想定値」で済ませることもあり、カタログ通りの性能が出ない場合もあります。高性能住宅は、設計力と施工管理力を持つ信頼できる業者を選ぶことが、快適で長持ちする家を建てるための最重要ポイントです。
腰痛や関節痛が良くなったり花粉症が改善されることがある
高性能住宅では、断熱性・気密性・換気性能が高いため、健康面でさまざまなプラス効果を期待できることがあります。
まず、室内温度が一年中安定していることにより、寒暖差による血圧変動や筋肉の緊張が減少します。これにより、冷えによる腰痛や関節痛が軽減される場合があります。
また、24時間換気システムにより、屋外からの花粉やPM2.5などの微粒子が侵入しにくく、室内空気が清浄に保たれます。これにより、花粉症やアレルギー症状が軽減されることがあります。
エアコン1台で全館空調が可能になることがある
高性能住宅では、高断熱・高気密によって熱損失が非常に少なくなるため、一般住宅に比べて少ないエネルギーで室内温度を安定させやすくなります。
この特性を利用すれば、エアコン1台で家全体を暖めたり冷やしたりする「小規模全館空調」が可能で、各部屋に個別のエアコンを設置する必要が減りますが、家の広さ、間取り、天井高、窓の面積や方角によっては、1台だけでは室温にムラが出ることがあるので、単純に1台で全館快適になるとは限らないことを理解する必要があります。
高性能住宅(高気密・高断熱)は鉄骨では無理なことがある
高性能住宅は木造だけではありません。
鉄骨造や鉄筋コンクリート造でも、適切な断熱・気密施工を行えば同様に高性能化が可能です。構造よりも「性能設計の精度」が、高性能住宅の本質です。つまり「高性能住宅=木造」というわけではなく、木造・鉄骨造・RC造のいずれでも高性能化は可能です。
ただし、コストと技術的難易度のバランスを考えると、日本では「木造の高性能住宅」が最も一般的になっています。
採光がよすぎると室内が加熱することがある
高性能住宅では断熱・気密性が高いため、採光が多すぎると室内が過剰に加熱す場合があります。
特に南向きの大きな窓から日射が入り続けると、冬は暖房効果になりますが、夏には室温が上がりすぎて過乾燥になることもあります。これは「日射取得」と「日射遮蔽」のバランスが取れていないためです。庇(ひさし)や外付けブラインド、Low-Eガラスの選定などにより、季節ごとの日射コントロールを行うことが重要です。適切に設計すれば、明るく快適で一年を通して温度が安定した住環境を実現できます。
窓が水族館のように分厚いことがある
高性能住宅の窓が「水族館のように厚い」と感じるのは、複層ガラスやトリプルガラスを採用しているためです。
これらの窓は、2〜3枚のガラスの間にアルゴンガスやクリプトンガスを封入し、断熱性と遮音性を高めています。さらにLow-E金属膜を施すことで、熱の出入りを抑え、冬は室内の暖気を逃さず、夏は外の熱を遮断します。その結果、窓の断面が通常よりも厚く見えるのです。内部環境の快適さや結露防止、省エネ効果に大きく貢献する高性能住宅の重要な要素となっています。
洗濯物は室内で干すことがある
高性能住宅では、基本的に室内干し(部屋干し)が主流です。
理由は、高気密・高断熱住宅では外気をできるだけ遮断し、室内の温湿度を一定に保つためです。外に干すよりも花粉や黄砂・PM2.5の影響も避けられます。
ランドリールーム(洗濯室)を設け、エアコンや除湿機、換気システムで乾燥させれば、部屋干しでもニオイやカビが発生しにくく、1年中快適に洗濯ができます。
高性能住宅の保証期間は長いことがある
高性能住宅の保証期間は、住宅会社や工法によって異なりますが、基本的には構造躯体と防水で10年が法律で義務づけられています(瑕疵担保責任期間)
しかし、多くのハウスメーカーでは、定期点検やメンテナンスの継続を前提に20年〜60年の、独自の長期保証制度を設けて保証期間を延長できる仕組みになっています。
また、断熱や気密、設備機器などの性能部分は、一般的に2〜5年程度の保証が多く、内容はメーカーや契約プランによって異なります。
高性能住宅では性能維持が重要なため、保証内容よりも「点検・メンテナンス体制」が信頼できる会社を選ぶことが大切です。
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