建築業者・ハウスメーカーの選び方(その1)

お家を建てるときの「業者選び」を考える前に。

お家を建てたいと思ったとき、まず直面するのが「どの会社にお願いするか」という問題です。ハウスメーカー、工務店、設計事務所、建設会社、日本には本当にたくさんの業者が存在します。では、なぜこれほど多くの住宅会社が林立しているのでしょうか?

その背景には、日本の住宅業界が歩んできた長い歴史と、時代ごとに変化してきた価値観があります。

今回は、まずその「業界の変遷」を少し振り返りながら、なぜこんなにも多様な選択肢が生まれたのかを整理してみたいと思います。

そして後半では、「あなたが家を建てるとき、何を大切にするのか」という“価値観”と“業者選び”の関係について考えていきましょう。

このテーマは、今後のシリーズの“総論”にあたる内容です。次回以降、より具体的な業者の特徴や選び方のポイントを掘り下げていく予定です。

目次

日本の住宅業界の変遷 〜大工の時代から高性能住宅の時代へ〜

日本の住宅業界は、戦前から現代に至るまで、社会構造や経済情勢、政策の変化に合わせて大きく進化してきました。

戦後まもない日本では、地域の大工さんが主導する「手づくりの家づくり」が主流でした。家は、住む人の希望を直接大工に伝え、現場で一棟一棟仕上げていくオーダーメイドのものでした。

しかし、1960年代の高度経済成長期に入ると、急速な都市化と住宅不足を背景に、国の住宅政策や住宅金融公庫の支援のもと、住宅の「量産化」が進みます。

この時代に登場したのが、セキスイハイムやミサワホームといったプレハブ工法のハウスメーカーです。工場で住宅部材を生産・規格化することで、品質の安定・工期の短縮・大量供給を実現し、「住宅産業」という新しいビジネスモデルを確立しました。

その結果、従来の大工さんは、個人で家を建てる「直営方式」から、工務店が職人を束ねて施工する「請負契約方式」へと変化していきました。また、設計を担う建築士・設計事務所と、施工を担う工務店・建設会社を分ける「設計・施工分離」の仕組みも整い、分業体制が定着します。

その後、地域の工務店は、大手ハウスメーカーとの差別化を図るために、地元の気候や風土に合わせた柔軟な設計、デザインの自由度を活かした家づくりを追求しました。

こうして、全国展開するハウスメーカーと、地域密着型の工務店が共存する現在の構造が築かれました。

1990年代のバブル崩壊以降は、少子高齢化や人口減少の影響で新築住宅の着工件数が減少し、住宅業界は「量」から「質」へと大きく方向転換します。空き家問題や高齢者向け住宅、耐震・防災対策、さらには環境に配慮した設計など、多様なニーズに応えることが求められるようになりました。

そして近年では、省エネ基準や環境性能の強化により「高性能住宅」が主流となり、断熱性・気密性・耐震性といった性能が住宅の標準的な要件となっています。

このように、日本の住宅業界は「量的拡大」の時代から「質的多様化」の時代へと進化してきました。

これからの家づくりは、人口構造の変化や環境課題にどう対応していくか、その方向性が、業界全体の持続可能性を左右する重要な鍵となるでしょう。

建築業者・ハウスメーカーをカテゴライズする

以上の日本の住宅業界の歴史と変遷を踏まえると、住宅建築業者は主に「ハウメーカー」「地元工務店」「設計事務所」の三つに大別でき、業態によってさらに細分化が可能です。

1.大手ハウスメーカー

  • 総合大手ハウスメーカー
  • 性能特化型ハウスメーカー
  • ローコスト型ハウスメーカー

2.地元住宅建設業者

  • 地元工務店(住宅事業特化型)
  • フランチャイズ型
  • 総合建設業・住宅部

3.設計事務所

  • 建築家タイプ
  • 設計・施工一括請負タイプ
  • 匠の技タイプ(旧称、大工さん)

建築業者・住宅メーカーの選び方3ポイント

家づくりを始めるとき、誰もが最初に悩むのが「どの業者さんに頼むか?」という点ではないでしょうか。  業者さん選びのポイントは、シンプルに言えばこの3つの価値観です。

  1. 予算
  2. 住宅性能
  3. デザイン・意匠

価値観は相反する

ここで覚えておきたいのは、「性能」と「デザイン」はしばしば相反するということです。  

性能を優先すれば、気密性・断熱性・耐震性を満たすために構造を最適化し、躯体形状はシンプルにするのが合理的なため、オンリーワンの家は求めづらくなります。

一方、デザインを重視すると、大きな窓や複雑な形状、個性ある外観など、感性に響く魅力を追求する方向になり、性能を阻害する要因になります。

つまり、性能は「合理性」、デザインは「表現」を追い求めるもので、この2つを同時に高めるには高度な技術と経験が必要です。

もちろん、総合大手ハウスメーカーなら、性能とデザインの統合・調和を図る設計力と施工力を持ち合わせていますが、「予算」において莫大なコストがかかることが予想されます。ここで、相互の価値観の相反は完結します。

予算内で性能とデザインを両立させるには

まず、一定の予算を組んだ場合に、次に「何を優先するか」を明確にすることが、両立させるための第一歩です。たとえば、このように考えてみます。

  • 構造と断熱 
    • これらは後から変えられない部分です。
  • 外壁の材料
    • 構造と断熱を補完します。
  • 間取りや窓の位置
    • 暮らしやすさのデザイニングです。
  • 内装・設備
    • 内装、設備、照明等のデザインは後からでも変えられます。
  • 外装
    • 外壁や屋根材の質感や色合いを揃えるだけでも、洗練されたデザインになります。

想定した予算の中で「後から変えられないもの」→「暮らしを左右するもの」→「見た目」の順で性能とデザインのバランスを考えてみた例です。

家づくりの3つ心構え

家に何を求めるのか、まずは自分自身の価値観を明確にしましょう。  

前提として、次の3つの心構えを意識すると、満足度の高い家づくりができます。

1. 家は、建てて2年住んでみないと本当の良し悪しは分からない。

2. 10年経てば、自分の価値観は必ず変わる。

3. あなたの価値観を「見える化」してくれるパートナーを選ぶことが大切。

あなたの「理想の家」は、何よりもまず「あなたの価値観」から生まれます。  

じっくりと、自分にとっての「良い家とは何か」を考える時間を取ってみてください。

その上で、自分の価値観を理解してくれるパートナー(建築業者・ハウスメーカー)との出会いを求めることをおすすめします。

日本の大工の匠の技はどうなった?

大工の匠の技と高性能住宅

何を今更と思われるかもしれませんが、一見、最新のテクノロジーでつくられる高性能住宅と、伝統的な大工の匠の技は、実は深く結びついています。

高性能住宅が目指すのは、断熱・気密・耐震などの性能ですが、いくら設計が優れていても、施工が正確でなければ性能は発揮されません。ここで重要なのが現場での「確かな施工技術」です。

たとえば、どれだけ良い断熱材を使っても、隙間ができてしまっては気密性は確保できません。大工さんが持つミリ単位の精度での加工と、隙間なく組み上げる技術です。これは、長年の経験に裏打ちされた匠の技そのもの。

高性能住宅のスペックを最大限に引き出し、長期にわたりその快適性を維持するには、「最新の設計思想」と「熟練の技」、この二つが両輪のように結びついている必要があるのです。

日本の伝統技術である大工の匠の技について知る

日本の大工の「匠の技」は、釘や金具をほとんど使わず、木と木を緻密に組み合わせる「木組み」にあります。継ぎ手や仕口と呼ばれる技法で、わずかな誤差も許されず、木の性質を読み、反りや収縮までも計算に入れながら組み上げます。この技術によって、長い年月を経ても美しく保たれる建物が実現してきました。

そのルーツは飛鳥時代に遡ります。仏教伝来とともに大陸から建築技術が伝わり、法隆寺に代表されるような宮大工の技が磨かれました。やがて鎌倉・室町時代には日本独自の「和様建築」が確立し、自然との調和を重んじる美学が芽生えます。

大工にとって、材料である「木」の命を最大限に生かすことが使命とされてきました。

見えない部分にこそ手を抜かず、次の世代に誇れる仕事を残す。その精神こそが、今も受け継がれる日本の匠の思想の原点です。

伝統技術衰退の深刻な要因

日本の大工が持つ「匠の技」、特に伝統的な木造建築の技術は、全体としては衰退の危機に瀕していると言えます。その担い手の数と技術を習得する環境が、過去数十年の間に劇的に減少しました。今や、絶滅危惧種と呼ばれるほど希少な技術となりました。

最大の要因は、大工の高齢化と若手後継者の不足です。かつて100万人近くいた大工人口は、現在では大幅に減少しています。熟練の技術を持つ大工が引退しても、それを引き継ぐ若手が極めて少なく、技術の断絶が現実のものとなっています。

現在、一般住宅の建築において、工場で構造材を加工するプレカット工法が主流になりました。これにより、現場で大工が木材一本一本の癖を見極め、「墨付け」(印をつける作業)や「手刻み」(継手・仕口をノミやカンナで加工する作業)を行う機会が激減しました。この伝統的な手刻み技術こそが「匠の技」の核心であり、それを学ぶ場が失われたことが衰退に直結しています。

伝統的な大工技術は、師匠の家に住み込み、背中を見て学ぶという長期にわたる徒弟制度によって伝承されてきました。しかし、現代の労働環境や価値観の変化により、このシステムは崩壊しました。一人前になるまで数年から10年近くかかる技術を指導し続けることは、経営的な負担が大きく、職人育成の仕組みそのものが機能しなくなっています。

伝統工法は、木材を一本ずつ手加工するため、現代の工法に比べて工期が長くなり、人件費がかかるため、建築費用が割高になりがちです。昨今は、低コストで短期間の建築を求める傾向にあることも、匠の技の需要減少に繋がっています。大工だけでなく、漆喰塗り、左官工事、建具(襖、障子)の製作、畳敷きなど、専門的な技術を持つ職人による手作業の多くは、人件費が高くなります。

匠の技の将来

大工の匠の技は完全に衰退したわけではなく、匠の技が生き残っている分野もあります。

文化財修復、寺社仏閣の建築・修復を担う宮大工は、その最高の技術を保持し、師弟関係を通じて継承に努めています。

2020年には「木造建造物を受け継ぐための伝統技術」がユネスコの無形文化遺産に登録され、国際的な注目と保護の必要性が高まりました。

一部の工務店や団体は、伝統技術を体系的に教える独自の育成プログラムや、専門学校との連携を強化するなど、現代社会に合わせた形で技術を次世代に繋ごうと試みています。

文化財や一部の専門分野ではその技術が守られており、「技術の灯を消さない」ための努力が続けられています。

最近では、伝統木造建築を学び直す若い大工や建築学生が増えています。文化財修復や古民家再生の現場では、昔ながらの仕口・継手の技術が再評価されており、デジタル技術を使ってそれを記録・共有する動きも進んでいます。

また、3DスキャンやCADを用いて、熟練職人の加工精度をデータ化し、後世に残そうという試みも始まっています。古きを守るだけでなく、現代の住宅に調和する「新しい伝統」として進化していくことが期待されます。日本の大工の匠の技は、「伝統」と「革新」の融合によって新たな価値を生み出す時代に入っています。

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