不動産投資・総論
不動産投資とは、投資購入した不動産を他者に貸し出して賃料収入を受け取る(インカムゲイン)と、購入金額以上で投資不動産を売却して売却益を受け取る(キャピタルゲイン)から成立する投資行動です。
①不動産投資のメリット
- 年金対策
- 生命保険の効果
- 節税効果
- 相続税対策
- レバレッジ効果
年金は、老後の生活設計の基盤です。
しかし、今の年金は若い世代が働いて稼いだお金をもとにして高齢者へ支給されるシステムです。
少子高齢化が進む現代では、働き手は減少し一方で年金を受け取る高齢者はどんどん増えていくため、現役世代や若年層の将来の年金に対する不安感は増大しています。
その点、不動産投資は投資判断を謝らない限り、家賃収入が入ってきますので長期的で安定的な収入が期待できます。
年金の代わりとして老後の安定収入を見込むことができる不動産投資は、特に若い世代にとってメリットがあるといえるでしょう。
不動産投資は生命保険として使われることは意外と知れられていません。
金融機関からの借入の際に「団体信用生命保険」に加入していたとして、ローンの契約者が亡くなったり、高度障害状態になったりした際には保険金が下りるため、残債は全額清算されます。
投資物件は、ローンの支払いがない状態で残って家賃収入を生み続けます。
遺族が相続し家賃収入を得続けることができますし、売却して換金できるわけですから、不動産投資は投資物件が遺族にとって経済的な助けになる可能性が高く生命保険代わりとなるのです。
不動産投資が節税につながる理由は「減価償却」の仕組みを利用できるからです。
「減価償却」とは不動産の耐用年数に応じての毎年発生する資産価値の目減り分を損金計上する考え方で、実際の支払いが毎年発生するというわけではありません。
「減価償却」は確定申告時に実際に出費がないのに費用計上できるため課税所得を圧縮できるのです。
所得税は「所得」にかかる税金です。所得とは、収入から必要経費を指し引いたもののことです。
サラリーマンでしたら「減価償却費」の計上で事業が赤字になった場合は、確定申告することによって赤字の分だけ給与から納税した所得税を還付してもらうことができます。
これを「損益通算」といいます。住民税も所得によって支払いますから、確定申告をすることで住民税を軽減することも可能です。
1. 評価減
不動産が相続税対策になるのは、現金を不動産にすると相続時に評価額が引き下がる相続税の財産評価額の仕組のためです。
単純に、1億円の預金を相続した場合の課税対象は1億円ですが、土地であれば20〜30%の評価減、建物であれば30〜70%の評価減が期待でます。
特に、所有不動産を賃貸した場合には、建物については借家法の関係で30%の割引きが適用され、その建物の敷地(貸家建付地)についても相続税評価額が割り引かれるのです(割引率は借地権割合といい地域によって異なります)。
2. マンションの購入
分譲マンションを購入することで大幅な評価減を得ることができ、概ね、相続税評価額は時価の3分の1程度に抑えられます。
特に、人気エリアのタワーマンションなどの人気のあるマンションの場合は時価と評価額の差が大きくなるため、より節税効果が期待できます。
3. 小規模宅地の特例の適用
小規模宅地の特例とは、不動産を相続した場合一定の条件を満たすことで「居住用の宅地」や「事業用の宅地」に対して相続税評価額が大幅に減額されるという特例のことです。
条件を満たせば最大8割の相続税評価額の減額が見込めるため、相続対策としてはぜひ活用したい特例です。
4. 配偶者控除の特例を活用した生前贈与
不動産の相続対策として夫婦間で自宅の生前贈与を行う場合には「贈与税の配偶者控除の特例」が活用できます。
婚姻期間が20年以上ある夫婦の間で一定の要件を満たす居住用不動産(取得のための資金含む)の生前贈与が行われる際に、最大2,000万円の特別控除が適用されるというものです。
暦年贈与の基礎控除110万円との併用が可能で、最大2,110万円までの贈与が非課税となるメリットがあります。
5. 相続時精算課税制度を使っての贈与
不動産を「相続時精算課税制度」を活用して不動産を贈与することです。
相続時精算課税制度とは60歳以上の父母や祖父母から20歳以上の推定相続人である子や孫に対し財産を贈与した場合、限度額の2,500万円に達するまでは何度も控除できるという贈与税の特例です。
贈与した時点では贈与税がかからず、相続するときにほかの相続財産と合わせて相続税が課税されます。
基本的には相続税よりも贈与税の負担が大きくなるので、相続時精算課税を使って生前贈与をすれば贈与税がかからず節税可能です。
財産評価については贈与時の時価で計算されますので、もし贈与後に価値が上がることが見込まれる財産を贈与できるならば、大幅な節税ができるということです。
不動産投資の醍醐味といえば、やはりレバレッジ効果を使った投資戦略となります。
レバレッジ(leverage)を直訳すると「てこの作用」となります。
小さな力で大きな影響力を発揮することの比喩として用いられますが、金融用語におけるレバレッジ効果とは「他人資本を活用することにより、少額の自己資本投資で大きなリターンが期待できる効果」を意味します。
借入金による事業拡大、信用取引・商品先物取引・FX(外国為替証拠金取引)などの投資で、一定の証拠金に対して数倍~数十倍の取引を行う場合に発生します。
不動産投資におけるレバレッジ効果とは、購入する収益物件(不動産) を担保に借入を行い、それを物件購入費用に充てることで少額少の自己資金で大きな投資効果を狙うことを指します。不動産投資においては、物件の収益性、将来的な金利の動向、自己のキャッシュフロー 状況などを総合的に考え、レバレッジをどれくらい効かせるかを判断する必要があるでしょう。
②不動産投資のデメリット
- 初期投資の額
- 利回り(表面利回り)
- 新築区分マンションの表面利回り 2~4%程度
- 新築マンション(アパート)の1棟の表面利回 4〜6%程度
- 新築戸建て賃貸の表面利回り 3~5%程度
- 流動性リスク
- 空室リスク
- 金利の変動リスク
「不動産投資信託」は別として、やはり不動産投資には初期費用として多額の資金が必要となります。
銀行融資のレバレッジを利用して、物件を現金で一括購入するだけの資金を持っていない人でも不動産投資を始めることができます。実際、サラリーマンや副業として多くの方々がローンを活用して不動産投資を行っています。例えば「不動産投資ローン(アパートローン)」は、公務員やサラリーマンといった安定収入がある人が通りやすいローンだといわれています。
もちろん、審査に通らなければローンを組むことはできませんが、このように金融機関が購入費用を融資してくれるのは不動産投資以外ではほとんどありません。
不動産会社の広告サイトで投資物件として売り出されている不動産賃貸物件について表示されている利回りはほとんどが表面利回りです。 表面利回りとは、満室を想定した年間家賃収入を投資額で割り込んだ数学で、諸費用(各種のランニングコスト)は考慮しておりません。
不動産投資における一般的な利回りの平均は、首都圏と地方都市とでは異なりますが
これに対して、実質利回りは同じく満室を想定した年間家賃収入から諸費用(ランニングコスト)を控除した残額を投資額で割り込んだ数学で、当然ながら表面利回りよりは低くなります。
不動産投資の利回りを見る際は、他の金融商品の利回りとは見方が異なる点に注意が必要です。広報されている表面利回りのみで投資判断をするのはかなりリスクが高いことになります。
不動産市場は基本的には売りたい人と買いたい人との1対1の相対取引なので、不動産は売却するまでに時間がかかりやすく、株やFXなどの取引市場の整備された有価証券等の投資対象とは異なります。
不動産投資が主として家賃収入を目的に投資された場合に、物件を売却しなくては行けない状況というのは、投資家自身もしくは経済環境が悪化した時です。
流動性リスクを回避するポイントとしては
1. 家賃収入における返済比率を低く設定して無理なローンは組まない
2. キャッシュフロー管理を行い、繰上げ返済で残債を早く減らす
3. 複数物件に投資するなら、換金性の高いワンルームマンションと一棟物件、戸建て物件とでポートフォリオを組んでリスク分散を図る
4. REIT(不動産投資信託)をポートフォリオに組み込む
不動産投資は証券投資よりはローリスクであるとされていますが、リスクがゼロというわけではなく、特に「空室リスク」については不動産投資の中で最も憂慮されるべきリスクと言えます。
一般論(経済環境の変化)で言えば、空室になる原因は次のようなことです。
1. 人口減少による賃貸需要が減少
2. 過剰な新築物件の建設により賃貸住宅の供給過剰
3. 勤労者の所得の低下による賃料の許容水準の低下
これに対する対応策としては、結論的には空室リスクの回避又は解消は「物件の魅力」「賃貸需要」「営業力」で決まると考えられます。
「物件の魅力」とは環境との適合性を意味し入居者に選んでもらうためには交通の利便性以外に、インターネットの環境の整備、セキュリティー、IoT化、ごみ置き場、浴室換気乾燥機、ウォークインクローゼット、宅配受取などの設備の充実が大切です。人気のポイントです。
「賃貸需要」とは家賃水準が適正でないと当然空室リスクは高まると言うことです。
入居者が支払う家賃を決定するときは、周辺の相場を知り、適正価格にすることが大切です。
相場よりも高すぎる物件は、入居者がつきづらいのは言うまでもありませんが、下げすぎてキャッシュフローが悪化すれば意味がありません。
「営業力」とは所有者(大家)の意識の高さで入居率が変わると言うことです。
年間の家賃収入=部屋数×部屋当たり家賃×入居率ですのでバランス感覚が重要です。
特にある程度築年数を経た物件の入居率を維持するには「賃貸管理会社」としっかりとしたコミュニケーションが必要なので営業力のある会社を選びましょう。
不動産投資を行う場合に収益物件を購入する場合、ほとんどの場合は不動産投資用ローンの融資を受けてレバレッジを効かせるのが一般的です。
また、不動産投資ローンを取り扱っている金融機関では「変動金利」制の商品を取り扱っているところがほとんどです。低金利時代が続くと見込まれている現在の状況においては、固定金利より金利が低い変動金利で不動産投資ローンの融資を受けることが慣例となっています。同じ金額の不動産投資ローンの融資を受けても、変動金利のほうが固定金利より低い金利で資金を借り入れることができ、その結果固定金利より多くのキャッシュフローを残すことができるからです。
しかしながら変動金利ですので、その金利は市場の動向などに連携する形で上下します。ローンの毎月の返済額が上昇すると不動産投資自体が破綻してしまう危険性がありこれを「金利変動リスク」と呼びます。
変動金利と金利変動リスクは相関する関係にあります。変動金利で不動産投資ローンの融資を受ける場合には、必ず金利変動リスクに備え、万が一金利が上昇した場合にも適切に対処できるよう準備しておきましょう。
当初から金利の高い固定金利で借入する、もくしは固定金利に借換えすることができないとなれば、運用管理を堅実にしてキャッシュフローを高めてリスクに備えることが肝要です。