相続手続きと遺産分割

相続に関する手続き

①相続発生後2週間以内にする諸手続き

・死亡届の提出

・金融機関の預貯金取引停止手続き

死亡の事実は金融機関に報告されるわけではありません。

預貯金口座のある金融機関等に連絡しないままでは、他の相続人が預金を無断で引き出すなどのトラブルに発展するリスクがあります。

預貯金取引の停止を申請するには戸籍謄本や印鑑証明書といった書類も必要となるため、早めに備えておきましょう。

・年金の受給停止手続き

年金受給権者が年金機構にマイナンバーを登録しているのであれば、年金の受給停止手続きは必要ありませんが、不明な場合は年金相談センターや年金事務所に相談してみましょう。

死亡時点で支給されていない年金がある場合は未支給年金を請求できます。

・世帯主変更届の手続き

・生命保険金の受け取り申請手続き

亡くなった方が生命保険に加入していた場合は保険会社の規定に従って保険金の受け取りを申請します。

受取人は加入時に決定しているため保険証券を確認して対象を明らかにしておきましょう。受取人を指定していない場合、法律で定められる相続分の割合を基に保険金を分割します。

また、保険金請求権には原則3年の時効がある点にも注意が必要です。

必要書類

・健康保険と介護保険の資格喪失の届出

保険の資格喪失手続きは、国民健康保険・介護保険など保険の種類によって異なりますので、期限にも注意しておきましょう。

国民健康保険と介護保険は、資格喪失届の提出と同時に保険証を返却します。

(届け出先)故人居住の市町村役場で期限は14日以内。

健康保険は、勤め先の会社が5日以内に厚生年金保険被保険者資格喪失届を提出します。

・公共料金等の名義変更や解約手続き


②相続発生後3ヶ月以内にする手続き(主として遺産相続関係に関する手続き)

遺産相続関係の手続きは、内容によっては厳密な期限があるため可能であれば3か月以内に済ませておきたい手続きです。

・遺言書の有無の確認や検認手続き

相続の内容を決めるためには、まず「遺言書」の確認が重要です。確認できない場合、原則、法定相続人によって相続されます。

・相続人の調査の実施

遺言書がない場合は、後ほど実施する遺産分割協議で法定相続人全員の合意を得る必要があるため、相続人の調査を行います。

法定相続人を明らかにするためには、亡くなった方の戸籍謄本を取得します。出生から死亡まで全期間分の書類を取得してから相続人となる人を決定する流れです。

・相続財産の調査の実施

相続財産の内訳を明確にするためには、不動産や現金以外の財産の調査も必要です。具体的には以下のようなものがあります。借金も相続財産になりますので相続放棄や承認の選択肢を見極めます。

・相続放棄や限定承認の検討

借入金も含めて相続人の詳細や遺産の内訳が明確になった後は実際の選択肢は以下の3つです。

自分自身への相続を認知してから3か月以内に決定する必要があるため専門家に相談することが望ましいといえます。

・遺産分割協議の開始

遺産分割協議で各相続人が受け取る遺産を明確します。全員の賛成によって成立するため人数が多いほど結論が出にくくなるかもしれません。 協議が長期化してトラブルを避けるために早期の協議開始が重要でしょう。

・遺産分割協議書の作成

相続の内容が決定した後は遺産分割協議書を作成します。期限はありませんし、厳密な項目は決まっていませるが以下を参考にできるだけ詳細に記載しましょう。


③相続発生後10ヶ月以内にする手続き(主として税金の申告に関する手続き)

相続の内容が決まった後は、10か月以内に各税金関係の手続きを済ませます。

・所得税の準確定申告手続き

被相続人が確定申告をしていた場合、未申告の期間分は相続人が「準確定申告」として申告します。

期限は亡くなった年の1月1日から死亡日までで相続人が相続を認知した翌日から4か月以内です。

例えば、以下の場合に申告が必要となります。

・相続税の申告

相続人が日本国内に住んでいる場合、原則全ての方が課税対象となります。但し、基礎控除額を上回らなければ納税の必要はありません。

申告と納税期限は相続を認知した翌日から10か月以内

また、非課税財産に該当する遺産や債務、葬儀関係の費用も課税対象から外されます。

遺産の総額が3,600万円以下であれば申告は不必要と考えてよいでしょう。

・相続税額の軽減に関する手続き

代表的な制度には以下のようなものがあります。

手続きには期限があるため超過しないように注意しましょう。

遺産分割が成立しない場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」が必要となります(3年を超過する場合は別途書類の提出が必要)

・遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)

相続の権利があるにもかかわらず法で定められた分の遺産を相続できなかった場合は、遺留分相当の支払いを請求できます。これが「遺留分侵害額請求」です。

2019年7月1日以前は「遺留分減殺請求」でしたが、法律の改正により支払い方法も変わりました。

不動産なども金銭に換算(評価)して支払われます。遺留分侵害を認知してから1年後、または相続発生から10年後に時効となるため注意しましょう


④遺産分割協議とは

「遺産分割協議」で相続人全員で合意をすることができれば、法定相続分の割合と異なる内容で遺産を分けることができます(民法907条1項)。

遺産分割協議が整わない場合は、各共同相続人は家庭裁判所に対して遺産の分割請求をすることができます。うまくいかない場合、最悪は裁判沙汰になることもあります。親族同士の揉め事は絶対に避けるべきですので、いきなり話し合いをはじめるのではなく、予め確認すべきことをおさえて事前準備を行うようにしましょう。まずは、以下のポイントをご確認ください。

遺産分割協議に先立ち確認したい4つのポイント

遺産分割に先立って確認していただきたいポイントは以下の4つです。


⑤遺産分割協議書

遺産分割協議書とは相続人どうしで遺産の分け方(遺産分割)について話し合った結果を書き残したものです。遺産相続のあらゆる手続きで必要になるほか、相続人どうしで話し合った内容を記録する目的もあります。

遺産分割協議書は相続の手続きで必要になることが多いですが、すべての人が必ず作成しなければならないものではありません。遺産分割協議書を必ず提出しなければならない手続きがある一方で、遺産分割協議書がなくてもできる手続きもあります。

相続手続きで遺産分割協議書が必要になるのは、主に次のような場合です。

相続手続きで遺産分割協議書がなくてもよいのは、主に次のような場合です。