高く売るには
①売却の理由
自己所有の不動産を売却する際の「売却の理由」は思いの外重要な事柄と認識すべきです。
購入希望者にとって、これから購入を検討する不動産が「なぜ売却されるのか」を知りたいということは、買う側からすれば、当然ながら重要な意思決定の要素となります。
ですので、売主がどのような理由で売却に至ったかについて明確な説明をできれば、不動産業者も販売活動や仲介業務の遂行がスムーズになります。
・相続した物件を売却
相続した家が空き家になってしまったり空き地になってしまったりしても、相続人が遠方にいて管理ができない場合、若しくは納税対策に換金する場合です。
・住宅の買い替え
結婚当初、分譲マンションを購入して生活を送っていた夫婦が、子供ができて手狭になったのを契機として戸建に住み替える。或いは、子供が独立して老後をマンションで暮らすのに、戸建てを売却するなどがこれにあたります。
・居住地が変わる
海外に移住、国内での転勤・転居等の理由で今住んでいる物件を売却する。
・資金の工面・住宅ローンの返済
何らかの理由でまとまった資金が必要となったときに、所有不動産を売却する場合。
住宅ローンの返済が困難となった場合の売却。
任意売買等で残債が残る場合には無担保で返済計画を立てることもあり得ます。
・離婚のため
離婚するときには、預貯金や不動産などの財産分与を行います。夫婦の共有財産(結婚後に築き上げられた財産)は、2分の1に分けるのが一般的です。
②不動産売却に伴う手続きの流れ
・情報収集と相場の把握
不動産の価格は地域の把握によって変わります。
売却したい不動産の近隣で売られている不動産情報を収集し、周辺相場を把握するのがよいでしょう。
小まめに不動産サイトで周辺相場を検索すれば、大体の相場がわかってきます。
・売却についての希望
不動産会社に相談する上で予め決めておく事柄は、売却までのスケジュール(時間)と希望売却金額の2つです。2~3社の不動産会社に希望を伝えて、相手方の意見を聞きましょう。
・売却物件の査定
不動産会社に相談すると、不動産会社は売却予定物件の査定を行います。査定は「いつまでに、いくらで売却できるか」の目安を立てるものです。
査定には、簡易の机上査定と現地での物件調査を基にする訪問査定という2つの方法があります。
訪問査定は、不動産の状態や周辺の環境などを担当者が現地で細部まで確認する方法で、精度は机上査定よりも高くなります。
査定額は不動産会社によって異なるため、複数の不動産会社へ査定を依頼するのがよいでしょう。
・媒介契約
販売活動と買い手を募集してもらう不動産会社を決め、媒介契約を締結します。
売り出し価格や売却に向けた活動の方針、不動産会社に支払う報酬等もこの契約を通じて決めます。
媒介契約の種類は3つあります。1社のみの不動産会社に買い手募集を任せる場合は「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」となります。
複数の不動産会社に依頼する場合は「一般媒介契約」となります。
3種類の媒介契約
媒介契約の種類別の特長
1. 専属専任媒介契約
買い手を探す売却活動を1社のみの不動産会社に任せる契約のため、他の不動産会社に売却依頼することはできません。また、買い手を売主自身が買主を見つけた場合でも仲介業者を通じて契約することになります。
売却活動の内容については、売主に対して1週間に1回以上、書面等で報告することが定められています。
2. 専任媒介契約
専属専任媒介契約と同様に、販売活動を不動産会社1社に任せる契約で、他の不動産会社に売却依頼することはできません。ただし、売り手である不動産の所有者が買い手を見つけた場合は、買主と直接契約することができます。
売却活動の内容については、売主に対して2週間に1回以上、書面等で報告することが定められています。
3. 一般媒介契約
複数の不動産会社に販売活動を任せることができる契約です。
売却活動の範囲が広くなるため、専属専任媒介契約や専任媒介契約と比べより広範囲に買い手を探索することができます。販売活動に関する内容の報告義務はありません。
・販売活動
媒介契約を結ぶと、不動産会社による広告掲載等の販売活動がスタートします。
不動産売却の情報が開示されるため、購入を検討する人が土地や建物を見にくるようになります。
・購入申込から売買契約
販売物件について購入希望者が現れると、購入希望者は不動産会社に「購入申込書」発行します。
購入希望者の希望条件(売買価格、支払い条件、スケジュール、融資の利用予定、その他)を検討し、売主と買主が合意した場合は売買契約の準備をしてもらい、売買契約の手続きへと進みます。
売買契約は、売主と売主側の仲介業者、買主と買主側の仲介業者が集まって行うのが一般的です。
・決済並びに引渡し
売買契約後の決済では、手付金を差し引いた売買代金の残代金を受領し、固定資産税や管理費(マンションの場合)等の清算を行います。決済が完了したら、引き渡し日に売却する不動産の引渡しを行います。
③不動産売却の手続きに必要な書類について
予め不動産売却に必要な書類を説明すると詳細は以下のとおりです。
1. 写真付身分証明書
不動産売却には本人確認が必要です。そのため、売主本人を証明するための写真付身分証明書として、運転免許証やパスポートなどが必要です。無い場合は2つの身分証明書が必要となってきます。
2. 印鑑証明書及び印鑑
売買に伴う各種書類などに捺印するための印鑑(実印)と、印鑑証明書が必要です。実印とは、市区町村の役場で登録した印鑑のことです。登記申請に添付する印鑑証明書の有効期限は3カ月以内です。
3. 登記済権利書、登記識別情報
登記済権利書は、売主が不動産を所有していることを証明するものです。登記済権利書は不動産の売却時には買主に渡し移転登記を行うことにより、不動産の所有権を移転します。
不動産が平成17年以降に取得したものである場合は、登記済権利書に代わり登記識別情報が発行されていることがあります。
4. 固定資産税・都市計画課税証明書、固定資産評価証明書
税金の算定の基準となった不動産の評価額や納税額等を通知する書類です。納税通知書及び課税明細書の再発行はできないので注意しましょう。
固定資産税は1月1日時点の所有者に1年分が課税されます。そのため不動産の引き渡し日に売主と買主の間で清算するのが慣例です。
固定資産評価証明書は、固定資産である不動産の評価額や課税標準額を証明するためのもので、市区町村の役場などで取得できます。また、住宅ローンの申込のために金融機関に提出したりします。
5. 建築確認済証や検査済証
売買する不動産(建物)は法律(建築基準法)に準拠していなければならないので、売却する不動産が建築基準法に基づいて建築されていることをこれらの書類によって証明します。
6. 地積測量図、境界確認書
地積測量図は、売却する土地の面積を明確にするためのものです。
境界確認書は、売却する土地と隣接する土地との境界をこの確認書によって確認します。
境界線が未確認の場合は、隣接土地の所有者と協議し、境界確定協議書に基づき地積測量図を作成します。
7. マンションの管理規約など
マンションを売却する際に必要な書類です。
マンションは集合住宅であるので各種規定を作っています。その内容を表示しているのがマンションの管理規約で、これによりマンションの維持管理方法や使用上のルールを買い手候補に伝えることができます。
買い手としては維持管理の方針だけでなく維持費や管理費などの費用を知るための重要な資料にもなります。
8. その他の売却する不動産に関する書類
地盤調査報告書、住宅性能評価書、既存住宅性能評価書などは、不動産の性能や品質を示すもので、買い手にとって重要な資料となります。
また、売却する不動産を購入した時の契約書、重要事項説明書、購入時のパンフレットなども買い手にとって重要な資料となります。