建築業者のカテゴリー
注文住宅(建売住宅でないお家)を受注・施工する業者さんの説明をいたします。
「請負」とは当事者の一方(普通は業者)が、ある仕事を完成することを約束し、相手方(普通お客様)はその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する」ことを言います(注1)。
建設業法では住宅工事の請負契約では必ず「契約書」を交わさなけれなりません(注2)。
お家の新築を請負契約で受注・施工するのなら、街の大工さんも大手ハウスメーカーも同じ「注文住宅の請負業者」になります。
建築業者さんの選び方で「工務店」と「大手ハウスメーカー 」の違いをご説明いたします。
①工務店
古くは昔ながらの街の大工さんや、家族経営的な地元密着型の工務店。
また、一級建築事務所は「設計」と「施工」が分離(分離発注)していて、施工はだいたい地元の工務店が請負っています(注3)。
特徴としては
- 施主様がオンリーワンのこだわりのお家を「フルオーダー」で発注する場合には「工務店(又は一級建築事務所)」が適しています。
- 「フルオーダー」なので設計 、意匠(デザイン)、設備(キッチン、照明等)、造作、外構等は施主様の意向に添った施工になります。
- 但し、プラン作りのための打ち合わせの回数が多くなり、手続きも煩雑になります。施主様のほうにも、お家造りのための勉強が必要となります。
- 見積書は非常に詳細な形式で積算されて提示されるのが一般的で、施主様の意向を反映した結果、当初概算で目論んだ予算内で納めるのが難しくなることがあります。
- また、工期についてもかなり長期間になることがありますし、施工エリアも地域密着的に限定される場合が多いです。
- 大手ハウスメーカーのような「営業の専門職」のような方はいません。
- 一級建築士に設計を任せて、施工を「入札制」で施工会社を決める場合以外は、「請負の工務店」に発注する場合には他社とのお値段の比較は難しいことになります。
②大手ハウスメーカー
基本的には「規格が認定された工法や部材」でのお家造りを請負います(注4)。
住宅の購入者は、ハウスメーカーから提示された「一定の工法や部材の選択肢」の中からからチョイスして、お家造りをすることになります。昔ながらの「請負の大工さん」のような匠の技術は余り必要とされません。
特徴としては
- 認定規格なので工期が短く 、煩雑な手続や打ち合わせ回数も少なく、仕事や子育てに忙しい人に適しています。
- 当初から一定レベルの住宅性能(注5)が予定(住宅性能表示)されており、建築後のメンテナンスや保証制度は、万全のシステムが充実している場合が多いです。
- また、住宅ローンの金利優遇や税制優遇はもちろん、各種の補助制度にも対応しています。
- 当初予定していた予算の範囲に納まりやすく、見積書もほぼ一式見積(注6)で住宅ローンの申込みも楽になります。
- 全国に展示場を設けて施工エリアも全国区で、それぞれの展示場には「専門の営業職」が待機して接客を行い、又は訪問して販売活動を展開しており、広告宣伝も活発なのが特徴的です。
ウィークポイントとしては、
- 認定規格の設計・施工なので、設計自由度(間取り等)はある程度制約されます。
- 外観上は画一的なフォルムになりやすく、オンリー・ワンのマイホームを望まれる施主様には物足りないことがあります。
- また、当初の規格を外れた設計や部材の使用の際には「オプション仕様の取り扱い」となり、金額が高騰する場合があります。外構も同様です(注7)。
- 大手ハウスメーカーと一言でいっても、トップクラスからローコストメーカーまで、構造、仕様のグレード、住宅性能等でお値段は様々です。
③地元中堅ビルダー等
街の大工さんや地域密着型の工務店から発展した場合が多く、上記の①と②の中間のような立ち位置で、次のようなパターンがあります。
・フランチャイズに加盟している場合
各地域の工務店が、一定の工法や技術を規格化して共有することでブランドを構築し、全国展開している形態です。
見た目は大手ハウスメーカーと類似していますが、施工は各々地域の工務店が請負い、フランチャイズの本部は工法や技術を開発して加盟店に提供したり、部材を共同購入してコストカットしたり、広報・宣伝を一括して引き受けたりして経営の合理化を進めています。
・中堅ビルダー
地域密着型ではあるものの、比較的広範囲な施工エリアに複数の支社やモデルハウスを有しています。独自のコンセプトと自社ブランドで、大手ハウスメーカーと遜色のない営業体制を構築しています。
※建築業者の選び方ポイントまとめ
・オンリーワンのマイホームを希望するなら請負の工務店(又は一級建築事務所)
・住宅性能、工期、予算の目処等に合理性を希望するなら大手ハウスメーカー
・上記の中間で折り合いをつけたいなら地元の住宅建築ビルダー
(注1)請負の規定、民法第632条
(注2)書面作成義務、建設業法第19条
(注3)設計・施工分離方式と設計施工一貫方式があります。
一級建築事務所(或いは建築家)に発注すれば分離方式になって、施工は「相見積り」や「入札」なんかで工務店を決めます。住宅メーカーや住宅専門の工務店の場合は、設計施工一貫方式がほとんどです。
(注4)平成12年の建築基準法の改正に伴い、住宅についての「型式適合認定」「型式部材等製造者認証」の制度が導入されました。この認定等を予め受けることにより、建築確認申請の手続きが簡略化されました。
また、同年の住宅品質確保法の施行により、「住宅型式性能認定」「型式住宅部分等製造者認証」の制度が創設されました。この認定等を予め受けることにより、住宅性能評価の手続きが簡略化されました。
(注5)住宅性能については別紙参照。
(注6)「請負方式の詳細見積書」の場合には、極端に言えば使用する釘の本数×単価まで表示が可能です。
結果的に提示された見積書は少年雑誌のような厚さになるかもしれません。
お打ち合せの結果、当初提示された「概算の見積書」よりはお値段が上がるのが通常です。
これに対して「一式見積書」は多くのハウスメーカーや工務店で採用されている見積書形式で、工事項目(基礎工事、本体工事、設備工事、仮設工事…等)ごとに金額がまとめられていて、総額が提示されている見積書形式です。
この形式なら見積書を数ページで終わらせることもできますし、お値段交渉の結果、当初提示された「概算の見積書」の最後に「お値引き金額」の一行で完結することもできます(良し悪しは別として)。
(注7)外構については別紙参照。