中古住宅について
少子高齢化に伴う空き家の増加によって、マイホーム購入の選択肢として中古住宅の購入が広がっています。
そもそも、日本の中古住宅市場は海外に比べて成熟しておらず、欧米では購入者の7割以上が中古住宅を選ぶのに対して、日本では住宅流通市場(新築住宅+中古住宅)のうち中古住宅のシェアは15%程度と言われています。
今後は、政策の後押しもあって日本でも中古住宅市場が活性化する見通しもありますので、中古住宅を購入する際のポイントをご説明させて頂きます。
①耐震性能
地震大国である日本においては、住宅を購入する際に押さえておくべき最も重要な住宅性能が耐震性になります。新築住宅であれば最新の耐震基準を満たしていると思われるますが、中古物件はまず耐震基準を満たしているかどうかを確認する必要があります。
「耐震基準」とは「建築基準法等」で定められた耐震性能の基準で、住宅を新築する場合の建築確認申請の際に必要とされる最低限の耐震性能の基準です。
木造住宅については、法改正(耐震基準の見直し)の経緯で次の3種類が存在します。
1. 旧耐震住宅(1981年以前に建てられた住宅)
2. 新耐震住宅(1981~1999に建てられた住宅)
3. 改正新耐震住宅(2000年以降に建てられた住宅)
新築住宅は改正新耐震住宅となりますが、1981年までに建てられた中古住宅は古い耐震基準になっている可能性がありますので、1982年以降に建てられた物件を探すか1981年以前に建てられた物件は購入後に耐震工事を施したほうが良いでしょう。
②リフォーム
一般的に「リフォーム」とは、老朽化した建物を新築の状態に戻すことをいい、原状回復ともいわれてたりしています。
「reform」は「悪い状態からの改良」を意味し、リフォームという言葉を使うときは、基本的に壊れていたり汚れていたり老朽化したりしている部分を直したりして「機能回復」することを意味します。
例えば、外装の塗り直しや、キッチンの設備の変更、壁紙の張り替えなどがリフォームに該当します。
一方、「リノベーション」とは、既存の建物に大規模な工事を行うことで、住まいの性能を新築の状態よりも向上させたり価値を高めたりすることをいいます。
英語での「renovation」は「革新、刷新、修復」を意味していて、新たな機能や価値を向上させることを表しています。
例えば、仕切りの壁をなくして、広々としたリビングダイニングキッチンにしたりすることなどが「リノベーション」に該当します。
リフォーム等をするためには購入したい中古物件の構造体が丈夫で頑丈な造りになっているかが重要になってきます。住宅の構造によってはリフォームのしやすい構造(木造軸組工法)か、向いていない構造(2×4壁式構造)があります。
あらかじめ購入する物件の建築法や構造体の強度を把握しておくことをおすすめします。
③瑕疵担保責任
中古住宅の場合は、住み始めてから建物に不具合が見つかる可能性があります。
万が一の事態に備えて「瑕疵担保責任」についても正しく理解しておくことが大切です。
瑕疵とは、一見しただけではわからない建物の欠陥や不具合のことを指します。売り主にすらわからない瑕疵があった場合、売り主が買い主に負わなければいけない責任が「瑕疵担保責任」なのです。
- 中古住宅の売買(売主・買主ともに個人の場合)、瑕疵担保責任の期間などは両者の合意によって決められる(1カ月、3カ月など)。
- 売主が不動産会社(リフォーム後の中古物件)の場合は、瑕疵担保責任の期間を2年以上とすることが定められている(宅地建物取引業法)。
「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」
2020年4月の民法改正により「瑕疵」という文言が「契約の内容に適合していないこと」と改められました。改正法の売主の責任は「契約不適合責任」といわれています。「契約不適合責任」では、住宅の品質が契約の内容に合っていない場合に補修や損害賠償などの請求が可能ということになりました。
一方で、売主と買主が個人の場合は「契約不適合責任を免除する特約」を設けることも認められています。
④中古住宅の住宅ローン
中古住宅の購入で住宅ローンを利用する場合は、次の点に気を付けましょう。
- 希望額を借りられないことがある
- 耐震性等の問題で住宅ローンを組めないことがある
- 返済期間の上限が新築に比べて短い場合がある
- リフォーム費用の借入
中古住宅は担保としての価値が低い傾向があります。経過使用により建物部分の価値が下がるためで、金融機関の審査において実際の購入金額よりも担保評価が低いと判断されやすくなります。
希望の金額を住宅ローンで借入れることができない場合は、自己資金が多く必要となる可能性があります。
なお、「中古住宅の定義」としては、フラット35では「竣工日から2年を超えている住宅又は既に人が住んだことがある住宅」とされています。一般の金融機関では「竣工から借入申込みまでが1年を超える住宅又は既に人が住んだことがある住宅」とすることがあります。
1981年(昭和56年)5月31日以前の建築基準法によって建てられた住宅は、現在の耐震基準を満たしていないことがあります。その場合、新耐震基準を満たすことを条件としている住宅ローンは利用できませんので注意が必要です。また、新築後に違法な増改築をしている場合や用途変更している場合などは、融資を受けられないことがあるので注意しましょう。
中古住宅の住宅ローンでは、返済期間が新築物件よりも短く設定る場合があります。返済期間が短くなれば毎月の返済額が増えますのでので注意しましょう。
中古住宅の購入と同時にリフォーム工事を行う場合、住宅ローンの借入額にリフォーム費用を上乗せできるか金融機関に確認する必要があります。
リフォーム資金を別途借入る場合には住宅ローンの借入金利よりも高いうえに、返済期間の短い場合が多いので住宅ローンにまとめたほうが有利と言えます。
⑤ホームインスペクション
ホームインスペクションとは、建築士等の専門家が住宅の現況調査を行い、欠陥の有無や補修すべき箇所等を客観的に診断するもので「住宅診断や建物検査」ともいわれています。
気に入った中古住宅が見つかった場合には、ホームインスペクションサービスが付帯しているか売主や不動産会社に問い合わせてみましょう。
ホームインスペクションは次の場合に活用されています。
1. 中古住宅の購入者が購入の判断材料として依頼する建物検査として
2. 仲介会社などが中古住宅売買促進のために行うサービスとして
3. 既存住宅売買瑕疵保険のための検査として
4. そのほか耐震診断やフラット35の適合検査等
ホームインスペクションを行う専門家は検査専門会社や建築士(設計事務所)で、費用は住宅の種類や構造などによって異なりますが5万~8万円程度が一般的だといわれています。
建物の不具合に関するトラブルが防げるため、売り主や不動産会社が進んで受けるケースも多くなっています。料金は依頼者が負担することになりますが、安心してマイホームを購入できることを考えると頼りになるサービスだといえます。